所長挨拶
早稲田大学台湾研究所は、日本における台湾に関する教育・研究の拠点を目指して、2003年10月に設立されました。
以来、本研究所は、日本・台湾をはじめとする国内外の研究者との連携を深めながら、アジアの多様な地域の経験と視点を踏まえた学術・教育活動を展開しています。こうした取り組みは、台北経済文化代表処をはじめとする関係機関との協力のもとに推進されています。
台湾研究は、日本において主に地域研究の一分野として発展してきました。文化、社会構造、歴史、教育などの多様な側面から比較的・実証的に取り組まれ、学術的理解の深化を促してきました。
当研究所では、台湾社会を通じて東アジアの歴史的・社会的多様性を捉えながら、グローバルヒストリーの視点に基づき、地域と世界をつなぐ知的基盤の構築を重視しています。
また、日台間の関係は近年、社会、経済、環境、文化、教育など多層的に発展しており、気候変動、技術と社会、高齢化、持続可能性といったグローバルガバナンスにかかわる課題に対しても、越境的アプローチから新たな知の枠組みを検討することが期待されています。
こうした時代の要請に応え、本研究所は、国内外の研究者や学生が相互に学び合い、分野を超えて協働する場を提供しています。
研究活動としては、共同研究プロジェクト、国際ワークショップ、公開シンポジウムなどを通じて、学術的な対話と協力の機会を継続的に創出しています。とりわけ次世代の若手研究者の育成に力を入れており、交流を通じた国際的ネットワークの形成を進めています。
教育面では、早稲田大学グローバルエデュケーションセンターにおいて全学副専攻「台湾研究」プログラムを運営し、2009年より全学部の学生に体系的なカリキュラムを提供しています。多数の修了生が、国内外で学んだ知見を活かして多様な分野で活躍しています。大学院レベルでも、講座の開設や研究支援の充実を図っています。
本研究所では、研究成果や活動内容をウェブサイトや出版物を通じて随時発信しています。今後も、日本や台湾を含む東アジアの大学や研究機関との連携を深めながら、アジアと世界が直面する課題を共有し、研究・教育の双方を通じて、未来志向の学術交流のプラットフォームを育んでまいります。
所長 早田 宰(早稲田大学教授)
台湾研究所の目指す目標
台湾研究所は、第一期、第二期で掲げた目標「研究拠点の形成」「高度な人材育成」「台湾を対象とした教育体系の強化」の成果を踏まえ、第三期の目標として「研究・教育活動のグローバル化」、「 現実政治・社会へのフィードバック」を掲げ、台湾を中心とした東アジア地域研究の高度な教育研究拠点としての基盤整備・よりいっそうの拡充を図っていく。
①研究面に関する具体的方針
東京外国語大学、天理大学、名桜大学、独協大学など、本研究所スタッフの所属する大学/研究機関との緊密なネットワークを生かした活発な研究活動を展開し、台湾研究叢書シリーズ刊行の継続によってその成果を社会へのフィードバックとしていく。
②学部教育に関する具体的方針
学部における全学共通副専攻(テーマ・カレッジ)、大学院におけるオープン科目(地域研究としての台湾)、現代台湾研究(政治学研究科)など、入門から専門へ広く門戸を開き、深く体系的な教育を展開している。また学部成績優秀者の選抜による台湾大学への交換留学(ダブルディグリー)派遣留学制度を通じて、世界で通用する語学力と専門を兼ね備えた学生の育成を図る。
③研究人材育成に関する具体的方針
台湾大学歴史系・早稲田大学政治経済学部政治学科学生交流プログラム、台湾大学社会学院との学術交流(集中講義・意見交換会等)等を通じて、台湾との間でよりいっそうの教育・研究に関する交流拡大を目指す。 台湾研究を専攻する大学院博士課程学生へのプロジェクトRA制度、ポスドク制度など、若手研究者に対する支援も引き続き積極的に行いつつ、国内外から招聘した優秀な研究者と若手研究者らが協働で特別講座やシンポジウムを開催するなど、台湾地域研究の高度な教育研究拠点形成のための「研究・教育活動のグローバル化」をさらに進めていく。
組織・運営
大学関連組織ならびに既存の研究所等との密接な連携・協力を図っていく。
そのため、当研究所の管理、 運営および事業活動の企画・立案を担当する運営委員会を設置した。
このほかに事務局、研究プロジェクト毎の 研究会や セミナー等が組織された。
早稲田大学に所属する研究所を中心に、内外の研究機関(政府系研究機関・大学・民間シンクタンクなどを含む) の協力を積極的に求め、研究教育活動を通じて、大学を中心とした「知」のネットワーク化を図り、 従来とは異なる柔軟性と 効率性の高い運営を行うことを目指している。